去る11月14日、認知症の人と家族の会主催による、映画「長いお別れ」(2019年公開作)を観ました。山崎努が演じる中学校校長を勤めた父が認知症になり、その7年間の家族の軌跡です。認知症の症状は娘の名前の間違いや怒鳴ったり、職業柄辞書の取り扱いがおかしくなったりとしながら徐々に生活に支障がでてきます。しかし厳格な父にはかわりありません。娘達は認知症になった父に自分の生き方の迷いを語りかけ、排便の世話をして、母の介護の大変さを実感したりしてますが、決して介護の辛さを見せてはいません。最後は気管切開をするかどうか家族の選択が迫られた時、娘は「父さんはこんなこと希望していないよね」と言った際、妻が「父さんの気持ちをわかったフリをしないで」と初めて強い口調で伝えます。その場面が、何故か忘れられません。娘にとっての父と、妻にとっての夫への思いの違いかなと思いました。認知症の介護を見せる映画でなく、どんな状態になろうとも父への尊敬と家族の愛おしさを、認知症になっても山崎努の尊厳を保った認知症の姿とともに表していると感動しました。
「恍惚の人」から始まった認知症を描いた映画が沢山あります。外国では2017年制作された「ロング、ロングバケーション」は、末期がんの妻と認知症の夫がキャンピングカーでバカンスに行く内容ですが、人生の終末と夫婦の愛情を語っています。是非この映画も観てくださいね。